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2025/10/08 16:15
天然素材の代表格として、私たちの暮らしに深く根づくコットン。
「オーガニック」という言葉と結びついたとき、それは一層、誠実で安心なものとして受け取られるかもしれません。
けれど実際には「オーガニックコットン=高品質」とは限らない。
それは、あくまで “育て方” の話だからです。
農薬や化学肥料を使わず、土壌にも配慮して栽培されるのがオーガニックコットン。
環境への負荷が少ないという点では、たしかに意義のある選択です。
けれど、繊維としての質や肌ざわりの良し悪しはまた別の話。
“オーガニックかどうか” ではなく、“どんな綿花なのか” が品質を決める鍵なのです。
その違いを教えてくれるのが「世界三大コットン」と呼ばれる綿たち。
エジプトのギザ、アメリカのピマ、中国の新疆綿。
どれも長い繊維を持ち、艶やかでしなやかな高級綿として知られています。
ワインでいえばグラン・クリュのような存在。
コットンの中でも、特別な価値をもつ品種たちです。
とはいえ、その出どころには複雑な事情もあります。
新疆綿に関しては、現在も人権問題をめぐる懸念が消えていません。
生産地を明記しないブランドも少なくないなかで、原料の背景を見極めるのは容易ではないのが現実です。
私たちが手にする生地の多くは、どこでどのように育てられた綿なのか、明かされていないことがほとんどです。
品質の違いも、情報の透明性も、なかなか届いてこない。
それでも「コットン100%」という表示だけで、どこか安心してしまう。
そんな空気が、今も私たちの周囲に漂っています。
でも、本当にそれでいいのでしょうか。
どこの誰が、どんな思いで作ったのか。
その声が聞こえないまま、優しさや安全を語ることに、どこか矛盾はないでしょうか。
たとえば「高品質なコットン」とされるものでも、洗えばシワになり、手ざわりが硬く感じられることもあります。
上質な素材であるはずなのに、日常で扱うには不便に感じる。
そんなギャップに戸惑うこともあるかもしれません。
だからこそ、必要なのは「名前」だけで選ばない視点。
“オーガニックだから安心” という信仰でも、
“三大コットンだから完璧” という憧れでもなく、
実際に手に取って、見て、触れて、選び取るということ。
私たちは今、たくさんの選択肢に囲まれています。
それは便利なようで、少し不安でもあります。
でも、自分の目と手で確かめながら「これが良い」と思えるものを選んでいくこと。
その積み重ねが、暮らしを、自分らしく整えていく道なのだと思います。
犬とともに生きる日々も、きっと同じです。
素材も、仕立ても、その背景も。
ただ “良さそう” ではなく “本当に良い” を、静かに選びとっていけますように。
